私は日本のことを、
自分たちのことを何も知らなかった。(「おわりに」より)
水俣、天草、須恵村…
故郷・熊本の暮らしの記録を初めて解く。
現代の歪みの根源を映し出す、
今を生きる人たち必読の生活誌。
世界を動かしてきたのは、
いつも、小さき者たちだった。
はたらく、まじわる、くに…
消えかけていた声を拾い、
紡いだ、渾身の二一編。
気鋭の人類学者の新たな代表作
本書では、私が生まれ育った九州・熊本でふつうの人びとが経験してきた歴史を掘り下げようとした。とくに私が地元でありながらも目を背けてきた水俣に関するテキストを中心に読みこみ、自分がどんな土地で生を受けたのか、学ぼうとした。そこには日本という近代国家が民の暮らしに何をもたらしてきたのか、はっきりと刻まれていた。(「はじめに」より)
目次
Ⅰ 水俣1
一、はたらく
二、おそれる
三、いのち
四、まじわる
五、うつろう
六、かかわる
七、うえとした
Ⅱ 水俣2
八、やまい
九、こえる
一〇、うつしだす
一一、ひきうける
一二、たちすくむ
Ⅲ 水俣3
一三、ねがい
一四、たりない
一五、かお
一六、あいまみえる
Ⅳ 天草
一七、こえ
一八、くに
Ⅴ 須恵村
一九、いのる
二〇、おとことおんな
二一、みえないもの
著者プロフィール
松村圭一郎 (マツムラケイイチロウ) (著/文)
1975年熊本生まれ。岡山大学文学部准教授。専門は文化人類学。所有と分配、海外出稼ぎ、市場と国家の関係などについて研究。著書に『うしろめたさの人類学』(第七二回毎日出版文化賞特別賞)、『くらしのアナキズム』(以上、ミシマ社)、『はみだしの人類学』(NHK出版)、『これからの大学』(春秋社)など、共編著に『文化人類学の思考法』(世界思想社)、『働くことの人類学』(黒鳥社)。